埼玉県川口市にある「工房集」は絵画や織りを中心に障害者が自ら取り組む表現活動の場所であると同時に、
工房集の母体である「みぬま福祉会」の表現活動プロジェクトそのもののことでもあります。
表現活動をしているメンバーは現在100人を超えています。
そのメンバーによる選りすぐりの作品群(絵画・ドローイング・織・立体作品)を工房集の紹介とともに作家ごとに展示します。
“アールブリュット”や“アウトサイダーアート”など様々に呼ばれるいわゆる障害のある人たちのアートは現在大きな関心を集めています。
アールブリュットやアウトサイダーアートの大きな企画展には工房集のメンバーのだれかが必ず招待され出展しています。
しかしまだまだそんなアートが注目をされていなかった頃から、
工房集は表現活動を仕事にという考え方のもとに始まって、15年以上にわたり活動し制作し続けています。
表現活動を持続しつづけているのは、アートとして作品を作ることを目的にしていること以上に、
絵を描いたりものを作ったりすること、いわゆる表現することが、
彼らにとって生きていく中で必要不可欠な行為「生きるための表現」だからです。
そしてだからこそ、その中からとても魅力的な作品が生まれてきます。
現代アートのコンセプト重視の流れの中にあって、人間が描くことや作ることに対する根源的な
欲求に導かれ表現された作品は、観るものに強いメッセージとなって伝わります。
こうして生まれる作品の中には現代アートと不思議とリンクしているものが多いのです。
そして美術史的な位置づけの一方で彼らの抱える現実には、移動を含め様々な制約がある生活や
コミュニケーションなど、自身の感情や感性を他者に伝えることに伴う困難さという問題が常にあります。
彼らにとって表現することは自分自身の存在を他者に認識してもらい、
さらに尊重してもらうことができる切実な手段・方法なのです。
実はその問題は障害者だけの問題ではなく現代社会に生きる我々自身の問題とも重なります。
様々な問題を投げかける魅力的な作品の数々を多くの方々に見ていただきたい。
工房集の営みはアート界は勿論、教育・福祉など分野を越境し、多くの人たちにアートってなんだろう、
福祉ってなんだろうといった根源的な「問い」をもたらすことになるでしょう。
出展作家
渡辺孝雄、渡邉あや、西川泰弘、前田貴、田中悠紀、小森谷章、佐々木華枝、
柴田鋭一、納田裕加、大倉史子、尾崎翔悟、齋藤裕一、野田夢友、関翔平、羽生田優、
武石トシ子、五十嵐久、横山明子、足立暁子、阿部美幸、三角賢治、安藤正幸、太田博子、
長谷部浩紹、佐々木省伍、鈴木千夏、梅澤勝典、白田直紀、田中啓示、後藤友康、宮川佑理子、
柏葉康之、鈴木大視、井林尚輝、小山健太、黒川幸司郎、今井幸彦、岡田亜弓、足立直久、
天野孝太郎、金子慎也、阿久津康仁、石井隆浩、林直登、宮里亨、片波見知代、伊勢川秀穂、
長谷川昌彦、伊藤裕、大橋直行、早船和也、荒井尭、鴨志田勇貴、栗田英二、和田良弘、栗原和秀、
横山涼、高谷こずえ、金子隆夫、箭内裕樹、平井亮太、成宮咲来、鶴岡一義、野本竜士、大串憲嗣、
野口敏久、緑川悠貴、大内健太、石黒尚巌、鴇田恵子、高橋創、福田勝則、梅沢翔、成本忠臣、本間充宏、
杉浦公治、松山真由美、木代至子、関友子、田村美弥、鈴木潤、諸岡幸一郎、嶋修二、関口忠司、土屋莉恵、
土屋郷子、高山栄一、小澤邦晃、岩瀬賢美、関谷由美子、篠原誠、水野裕一、大塚勝子、大塚たね、箕田哲実、
矢部幸治、松崎亮、遠藤好三、長田繁子、吉律子、小西清子、横山松幸、草野結美、大久保雅章、福島香織、
渋谷博一、関根嘉宏、阿部佐知子、鈴木聡子、中野真、福島良、三浦貴大、関根一博、小泉千尋、藤田英高、
田島絵里、鈴木綾乃、廣川由布子、小林純己、石塚あずさ、中野綾子
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会期:2012.09.09(日) - 09.16(日)
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会場:東京都美術館
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工房集アートディレクター・美術家:中津川浩章